Short Design6/12-Free easy-

[Country family story]

この街の夜明けを久しぶりに過ごしている。

爽やかな空気と朝焼けの海に憧れている。でもまだ朝焼けの海を見たことはない。

沈み切った太陽を惜しむように砂浜を動けずに私自身も没入してみたいと思う。でもまだ踏ん切りがつかない。


お豆腐屋さんが金曜の夕方には家々をまわり、近くのスーパーには時期になれば焼き芋屋さんがいてくれる。小さな借家には小さなお庭があって、小さなベランダには小さな明かり取りが天窓のように丸く開いている。

裏庭がある。小学校の時に親しんだ裏山を感じさせる。鳥が来てくれる。蝶々が来てくれる。この間はダンゴムシがいた。お隣のお庭からきゅうりのお裾分けがあってそれも夏には楽しみのひとつとなった。

大きな街の小さな住宅街が気に入り始めた。

卓さんの朝食を作ることも、お弁当を作ることも、ワイシャツや作業着のお洗濯をすることも、いってらっしゃいと見送ることも私の夢だった。

なんだかんだ文句を言いながら毎日を笑い転げることがティーンからやり残した宿題だと思っている。

私の未来は開き始めている。卓さんがいないと私の人生は進まないような気がしている。卓さんがいるとすべてが煌めいて毎日がお祭り騒ぎなのかもしれないと。笑い転げている。昔の思い出はどれもこれも可笑しくて、思い出が今の私に笑顔をもたらしてくれている。

照れ屋で肝心な時に失敗してしまうようなところは私に似ているかもしれない。

それでも諦めが悪く一途なところは私そのものだと思った。


白んだ空が薄紅色に色づいてくると、私はこの街にひとりではないことを実感して涙がにじんでくる。じんわりと込み上げるような幸福感はこの街のひとりひとりが顔見知りになってきたからかもしれない。

ここまでくるのに5年の歳月を要した。石の上にも三年である。妥当な年月だ。


卓さんのことを評して私はラスボスと言った。

いろいろな敵がいていろいろな恋をしてきたけれど、最後の敵は卓さんだ。

「ラスボスを倒すと、、、たしか、、、」

「ゲームクリアだよ」。

結婚がゴールという意味でゲームクリアだとは思っていない。

私が思うこのゲームクリアはひとつの旅路の終わりを意味する。出会うべくして出会った二人が順調に恋愛をして、冒険と研鑽を積んでようやくひとつになることを私はひとつのゲームクリアだと思うようにしている。

以前、そう、この街に引っ越しを決めた日のバスの中だと思う。不純にも卓さんとの子供の名前を3つほど考えたことを思い出した。

お互い一文字の感じだから。上の子は一文字で真ん中の子は二文字で下の子は三文字がいいと思った。一姫二太郎三茄子なんていうから長女、長男、次男がいいなあと思った。

たくさん夢を描いた。たくさん理想を描いた。たくさんやりたいことをあげてきた。

大学生になったら卓さんと同棲したいと夢を描いたし、仕事は私は小説家に卓さんはゲーム会社のプランナーになったらいいのにと夢想した。

大きなアルファードかランドクルーザーで盆暮れは実家に帰り、米や野菜を後部座席に乗せて帰ってくる。子育てに追われて、仕事に追われてあっという間に年をとって、両親の葬式や親戚の法事で時々帰省していたのに、いつの間にか自分達が70を過ぎて「そろそろ故郷に帰ろうか」なんて話をする。故郷は私たち共通の財産だ。だからあえて都会で暮らすことを決めた。

クリくんもマッキーもユウ1もユウ2も共通の財産のもとで過ごしてきた。

14歳から16歳私たちにとっては激動だった。

私自身、大病ばかりして親を心配させて自責の念にひとり苛まれた。

友人が欲しかった、、、いや、違う。ふつうにまた中学の頃のように彼らと笑い合いたかったのだ。

かけがえのない財産はすべて故郷にあった。


6月12日、今日は昨年11月18日に亡くなった父の誕生日だ。生きていれば75歳になる。

父はマッキーのこともクリくんのこともユウ1のこともユウ2のこともよく知っている。

マッキーとクリくんの笑い話は大好きだったし、ユウ1が熱狂的な野球ファンだった話は喜んで何度も聞いてくれた。ユウ2の優しさは母がいつも父に話していた。

そして卓さん。はとこのHちゃんは私のお目付役か教育係であるかのように考えていた父母は彼女に全幅の信頼を置いていた。だから父はきっと卓さんにこう言っただろう、

「ああ、Hちゃんのはとこなんか!そりゃ、まあ、ひとつめぐのことよろしくお願いします。めぐ、良かったな、Hちゃんと親戚じゃねえか」。

Hちゃんは私が病み入りしてからはじめて旅行に連れ立ってくれた恩人でもある。時々私を遊びに誘ってNちゃんとも再会させてもらった。

ちなみにこのHちゃんとNちゃんはユウ2との再会を切望していた。

私たちのことが少し落ち着いたらまた連絡をしてみたいと思う。


父が私に友情を思い出させてくれた。父がまた友達の元に私を返してくれた。

「お父さんはもういないんだから、Hちゃんや卓くんの言うことよく聞けよ」、そんな声が天井から聞こえてきた気がした。


父は地元で生まれて地元で死んでいった人だった。だから同郷の同級生と結婚してほしい気持ちはあったはずだ。何よりも卓さんは一時的とはいえ父の会社の後輩にもなった。

太鼓判を押さないはずがない。


病床での即席の結婚式を父は覚えているだろうか。


we did free easy.

it is not formal, not traditional, not admire.

But we got the happiest.

Because in that moment, His daughter smile the most shining when in his all life.

We together Precious Pleasures Laugh.


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