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欲望


『私の欲望はかつてないほどに高まっていた。彼女に踏み込んでしまったことは僕の制欲に起因するというのに、、、

僕は欲望に準じてしまったことを後悔している。が、しかし、ここまで来てしまったのなら進むしかない。

「天気晴朗なれど、波高し」その意味をこれから見せつけられることはわかっているものの』


電報にしては長文であった。しかし、なぜ電報であったかは俺はよくわかっていた。この欲望の日に送られてきたことに意味がある。

天気は晴朗である、いつでも美しい海を見渡すことができる。平和とは天気晴朗の如くである。

波高し、これはあの3,11以来多くの日本人の心に棲みつく魔物となっている。「意図せず」と俺は解釈しているが、それも俺の視野のせまさゆえなのかもしれない。

幾度も幾度も高波が襲ったことなどこの10数年のなかでなかったのに、私たちは波が高いことを覚えさせ刻みつけ棲みつかせなければならなかった、まるで沖縄の本土復帰のあの祝賀のように。



欲望ーー

俺は女を抱く時にいつもぼんやりと考えていることだ。今宵の全てを俺は何に例えようか。

サイレンの音なのか、それとも電話のベルなのかそれさえも曖昧なのは、俺が欲望に溺れているからかもしれない。


電報の主が直接家に来ることを恐れながら俺は俺自身の欲望と戦う週末を迎えている。




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